ブログ 岡本浩和の「人間力」発見日記

音楽は人を傷つけない

さすがに師走も下旬を迎えるとめっきり寒くなりました。
今日はいつもより少し早く大学に来ています。
年内最終授業で評価付けをしなければならず、
今は個人情報の持ち出しなどとてもうるさい関係で資料を持ち帰ることができず、
という事情です。
1時間早い電車に乗ると、車内の込み具合が違います。
さすがに小田急線もまだ多少混んでいて、いつもならすぐに座れるところ
「新百合ヶ丘」まで立ちんぼでした。
電車の時間はとても貴重で、
普段なかなか読めない書籍を集中して一気に読めるところが嬉しいです。

ちなみに、今日は「武満徹著作集5」(新潮社)を読んでいて、
ルーカス・フォスとの対話の中でとても興味深い箇所があったので抜粋します。

武満 実は僕はフォスさんの言葉で忘れられないフレーズがひとつありましてね。1970年の万博の時におっしゃったんですが、つまり「音楽は人を傷つけない」。この言葉に、僕はものすごく影響を受けたんです。
FOSS そうでした。それをどんな文脈で言ったかも憶えています。あの時私は古代ギリシア音楽の旋法について考えていて、つまり彼らは戦争についての旋法、平和についての旋法、愛についての旋法というように、様々な旋法をその対象に従って使い分けていたのです。でも私は、それは間違っていると思った。そうした区別は単に習慣的なもので、現実ではないのではないかと考えたのです。
だって考えてもみて下さい。戦争向きの音楽—例えば行進曲を聴いて、あなたは人を殺したい気分になりますか? そんなことは絶対にありえない。昂揚した気分になったり、お酒を飲みたくなったり、はしゃいだりしたくはなるかもしれないけれど、人殺しをしたいなんて、絶対に思わないと思うんです。なぜか。
つまり、芸術というものは、もともとプロパガンダには肌合いが合わないものなんです。プロパガンダというのは噓を広めるためのもので、芸術はその正反対にある。だから、もし芸術が武器になりうるとしたら、それは平和のための武器以外にはありえないんです。

(1988年11月29日、すきやき・よしはしにて)
P144

「武満徹著作集5」(新潮社)

人間の作ったシステムの中では
どんな主張にも例外はあるので、「絶対」とは聞い切れませんが、
長らく音楽作品に触れてきて、
なるほど、作為のない音楽ほど傑作かつ普遍的で、
それこそ自然に近いものはないのかもしれないなと思いました。

今年も残すところ10日。
今日も良い一日でありますよう。
※写真は多摩センター駅前のクリスマス・イルミネーション。


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